稲毛デンタルクリニック

歯周病で「抜歯」と言われた…
残せる基準と治療の選択肢

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歯科医院で「この歯はもう抜くしかありません」と宣告されるのは、誰にとっても非常につらい経験です。なかでも歯周病は、自覚症状がないまま進行するため、突然の宣告に「納得がいかない」という方も少なくありません。

近年は歯科医療の進歩により、かつては抜歯とされていたケースでも「歯周組織再生療法」などの高度治療によって歯を残せる可能性が広がっています。一方で、「残せるかどうか」を見極めるには、専門的な知識と経験に基づく慎重な判断が不可欠です。

本記事では、日本歯周病学会の専門医・認定医が在籍する当院が、抜歯を判断する医学的な基準から歯を残すための高度専門治療、さらに抜歯後の見通しまでを詳しく解説します。

歯周病で「抜歯」と診断される基準

根管治療(歯内療法)とは

歯科医師が「抜歯」を提案するとき、それは経験や勘だけで決めているわけではありません。レントゲン画像や歯周ポケットの数値など、客観的なデータに基づいて「これ以上残しておくことは有益ではない」と判断したときに初めて抜歯を宣告します。 では、具体的にどのような状態が抜歯のラインとなるのか、まずはご自身の状態と照らし合わせて確認してみましょう。

【数値の目安】歯周ポケット6mm以上は要注意

歯と歯ぐきの境目には、本来「歯肉溝(しにくこう)」と呼ばれる浅いすき間があります。深さはおおよそ1〜2mm程度で、歯ぐきに炎症は起きていません。

一方、歯周病によって歯ぐきに炎症が起こり、歯を支える組織が破壊されると、このすき間は深くなります。このように病的に深くなった溝を「歯周ポケット」と呼び、これが歯周病の進行度を判断する重要な指標となります。

【歯周ポケットの簡易的な目安】

一般的に、6mmを超える歯周ポケットが確認される場合、通常の歯周病治療だけで改善するのは難しく、抜歯を含めた治療判断が必要となります。ただし、数値のみで即座に抜歯が決まるわけではなく、他の検査と合わせた総合的な判断が不可欠です。

【症状の目安】腫れ・膿・動揺(グラつき)

数値に加えて、実際の症状も重要な判断材料になります。

腫れや膿を繰り返す

治療を行っても歯ぐきの腫れや排膿を繰り返す場合、その歯が慢性的な感染源となって周囲に悪影響を及ぼす可能性があります。

著しい歯の動揺(グラつき)

ピンセットで歯をつまんだ際、前後左右だけでなく上下方向にも大きく動く場合、歯を支える骨の機能が大きく損なわれているため、保存が極めて困難です。

噛む機能の喪失

「痛くて噛めない」「噛むと位置がずれる」など、歯として十分に機能していない状態では、無理に残すよりも抜歯後に補綴治療を行ったほうが、結果的に食事の満足度が向上することもあります。

レントゲンで見る「骨の吸収」と限界ライン

インプラント治療とCT撮影について

レントゲン検査では、歯を支える「歯槽骨(しそうこつ)」がどれだけ残っているかを確認します。

根の先端付近まで骨がない

歯の根っこを支える骨が大きく消失している場合、物理的に歯を固定することが不可能です。

根分岐部(こんぶんきぶ)病変

奥歯の根の股の部分まで骨が溶けている場合、そこに細菌が溜まりやすいため、治療の限界点となることが多くなります。

重度歯周病でも歯を残す治療法

日本歯周病学会専門医とは?

他院で抜歯と診断された場合でも、専門的な診断と治療によって保存を試みることができる場合があります。

歯ぐき・骨を再生させる「歯周組織再生療法」

歯周組織再生療法とは、歯周病によって失われた歯槽骨や組織に対して、一定の条件下で回復を促すことを目的とした治療法です。<br>以下のような薬剤を、歯ぐきを切り開く外科手術(歯周外科治療)と組み合わせて使用することで改善が見込める場合があります。

リグロス

成長因子(タンパク質)の力を利用して、周囲の細胞を増やし、血管や組織を再生させます。保険適用となるケースもあります。

エムドゲイン

歯が生えてくるときに重要な働きをするタンパク質を塗布し、歯周組織の再生を促します(自由診療)。

ただし、「骨の溶け方」や「残っている骨の形」によって適応できるかどうかが決まるため、全てのケースで可能なわけではありません。

それでも「残せない」と判断される要因

上記のような高度な技術をもってしても、以下のような場合は抜歯が避けられないこともあります。

患者様自身でセルフケア(プラークコントロール)が困難

どんなに高度な治療を行っても、日々の歯磨きでお口の中を清潔に保てなければ、歯周病はすぐに再発します。ご自身でのケアが難しい、あるいは協力が得られない場合は再発リスクが高すぎるため、無理に残すのはあまり現実的ではありません。

歯根破折(しこんはせつ)の併発

歯の根っこそのものにヒビが入ったり割れたりしている場合、隙間から細菌が絶えず侵入するため、感染を止める手立てがなく、抜歯以外の選択肢がなくなってしまいます。

無理に歯を残すリスク|抜歯が「最善の選択」になる理由

「自分の歯を残すこと」は大切ですが、状況によっては「無理に残すこと」が将来の大きな損失につながることもあります。

隣の健康な歯まで失う「共倒れ」の危険性

重度の歯周病にかかった歯は、いわば強力な「細菌の感染源」です。感染源となっている歯を無理に残すと、炎症が周囲に広がり、隣接する健康な歯の骨まで吸収が進むことがあります。

その結果、1本で済むはずだった抜歯が、2本、3本と増えてしまう事態にもなりかねません。このような共倒れのリスクを回避するためにも、抜歯が賢明な判断になるケースもあります。

全身の健康への悪影響

歯周病は糖尿病や心疾患、誤嚥性肺炎など、全身疾患とも無縁ではありません。

歯周ポケット内で増殖した細菌や、炎症によって生じた物質が血流に乗って全身を巡ると、これらの疾患を引き起こしたり、悪化させたりすることが近年の研究で明らかになっています。そのため、全身の健康を守るために「感染源(抜歯対象の歯)を絶つ」という判断が必要な場面もあります。

将来の治療(インプラント等)に必要な骨がなくなる

今はまだギリギリ残せても、数年後に骨が完全に溶けきってから抜歯をした場合、次の治療に必要な骨が不足してしまう可能性があります。

いざインプラントや入れ歯を入れようにも、土台となる骨がないと治療が困難になったり、追加の治療で費用が高額になったりしてしまうことも珍しくありません。このような事態を避けるために、骨が残っているうちに抜歯を行う「戦略的抜歯」という考え方が重要になる場合もあります。

歯周病で抜歯した後の選択肢(メリット・デメリット・費用)

抜歯に対する不安の多くは、「抜いた後どうなるのか?」「ちゃんと噛めるようになるのか?」など、先の見通しが立たないことから生じるものです。

抜歯後の治療法(補綴治療:ほてつちりょう)には、主に3つの選択肢があります。それぞれの特徴を知り、ご自身のライフスタイルに合った方法をイメージしてみましょう。

なお、治療法ごとの費用は、保険適用の有無やお口の状態によって大きく異なるため、事前の説明と相談が重要になります。

【選択肢1】インプラント:自分の歯のようにしっかり噛みたい

顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。

メリット 天然の歯に近い感覚でしっかり噛め、見た目も自然です。独立した構造のため、隣の歯を削る必要がないのが最大の利点です。
デメリット 外科手術が必要です。自由診療のため費用が高額になり、治療期間も数ヶ月を要します。

【選択肢2】ブリッジ:違和感を減らしたい

失った歯の両隣を支えにして、橋をかけるように人工歯を固定する治療法です。

メリット 固定式なので違和感が少なく、自分の歯に近い感覚で噛めます。保険適用があり、比較的短期間で治療が終わります。
デメリット 両隣の健康な歯を大きく削らなければなりません。また、本来3本で支える力を2本で支えるため、支柱となる歯に大きな負担がかかります。

【選択肢3】入れ歯:外科手術を避けたい

取り外し式の人工歯で、部分入れ歯や総入れ歯があります。

メリット 歯を削る量が少なく、外科手術も不要です。安価で製作でき、修理や調整も比較的容易です。
デメリット 他の方法に比べて噛む力が弱くなります。取り外しの手間や異物感、バネが見えるといった見た目の問題、バネをかける歯への負担があります。

歯周病で抜歯に迷ったら?後悔しない決断のために

歯周病で「抜歯が必要」と説明されても、すぐに気持ちを整理できないのは自然なことです。その判断が本当に妥当なのか、ほかに選択肢はないのかと迷いが生じるのも無理はありません。
だからこそ、説明の内容を整理し、別の視点から検討することが、納得のいく治療選択につながる場合があります。

「セカンドオピニオン」という選択肢

抜歯の説明に納得できない場合、別の歯科医師の意見を聞くことは患者様の正当な権利です。

納得して抜歯をするのと、疑問を抱えたまま抜歯をするのとでは、その後の治療へのモチベーションや満足度が大きく異なります。また、歯周組織再生療法の可能性を知りたい場合は、専門的な診断を受けることが判断材料になります。

歯周病専門医と一般歯科医の違い

重度歯周病の場合、相談先としておすすめなのが「日本歯周病学会専門医・認定医」がいる歯科医院です。専門医・認定医は、「残す治療」と「抜く治療」の双方を熟知したうえで、長期的な予後を見据えた判断を行います。

当院にも「他院で抜歯と言われたが、どうしても諦めきれない」という患者様が来院され、精密検査や診断の結果、歯を残す選択が可能となるケースもあります。「まずは残すための最大限の努力」を提案し、それでも難しい場合は「将来を見据えた補綴計画」をご提示します。

大切なのは「今ある健康な歯」を守ること

歯周病による抜歯は「終わり」ではなく、お口全体の健康を立て直すための前向きなリスタートでもあります。

その際に重要になるのは、納得できる診断を受け、自分に合った治療法を選ぶことです。

なぜ抜歯が必要なのか、数値や画像で客観的な説明を受けること

専門医による「残す治療(歯周組織再生療法)」の可能性を探ること

無理に残すリスクと、抜いた後のメリット・デメリットを天秤にかけること

これらのステップを踏むことで、どのような結果になっても、きっとご自身のQOL(生活の質)を高める最良の選択ができるでしょう。

「本当に抜くしかないの?」と迷われている方は、ぜひ一度、歯周病専門医・認定医のいる当院へご相談ください。精密な検査に基づき、自身が心から納得できる「最善の選択」を一緒に見つけていきましょう。

【自由診療に関するご案内】
 本ページでご紹介している歯周組織再生療法(エムドゲイン等)は、健康保険が適用されない自由診療です。

■標準的な費用
 ※症例や治療範囲により費用は異なります。

■主なリスク・副作用
 手術後に腫れや痛み、出血を伴う場合があります。
 治癒の経過には個人差があります。
 ※治療内容や適応については、事前に十分な説明を行ったうえでご提案いたします。
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